バルトリハリ(梵: Bhartṛhari, भर्तृहरि)は、インドの詩人、文法学者。5世紀ごろの人物とされており、サンスクリット語の著作が伝承されているが、詩と文法学はそれぞれ別人の業績とする説もある。バルトリハリの人物像については数多くの伝説が残されている。

7世紀のインドに渡りナーランダ僧院に学んだ唐僧義浄の『南海寄帰内法伝(なんかい ききないほうでん)』に、文法学者バルトリハリについての記述がある。

義浄によれば、バルトリハリは文法学者パーニニについてのパタンジャリの注釈書『マハーバーシュヤ』を研究したとされ、言語哲学書『ヴァーキヤ・パディーヤ (Vākya-padīya) 文章単語論(三章篇)』を書いたとされる。そこで彼は、宇宙の根本原理は言語ブラフマンであり,諸現象はその仮現であるとしている。彼の主張は「言葉はブラフマンである」という宣言だと言えよう。

また、詩人としてのバルトリハリの作品は、10世紀から14世紀にかけて3種の『シャタカ (Shataka) (百しょうの詩集)』としてまとめられた。天国へ至る道についての『離欲百頌』、世俗の交際についての『処世百頌』、恋愛についての『恋愛百頌』の三つがあり『シャタカ トラヤ (Śatakatraya) (三百頌)』と呼ばれる。17世紀にはアブラハム・ローゲルがオランダ語に翻訳、ヨーロッパにも伝わった。

著作(主な日本語研究)

  • 上村勝彦『インドの詩人―バルトリハリとビルハナ』春秋社、1982年。 NCID BN02072642。 
    • 新版『夢幻の愛 インド詩集』春秋社、1998年。ISBN 978-4393132760。 - 『三百頌』の翻訳、論考「バルトリハリの伝説と作品」を収録
  • 赤松明彦訳・注解『古典インドの言語哲学』 全2巻、平凡社〈東洋文庫〉、1998年。 ISBN 978-4256194652, 978-4256194669。- 『ヴァーキヤ・パディーヤ』の翻訳を収録

出典・脚注

参考文献

  • 上村勝彦『インドの詩人』の解説
  • 赤松明彦『古典インドの言語哲学』の解説

関連項目

  • インド文学
  • サンスクリット文学 (Sanskrit literature) 

外部リンク

  • 田中於莵弥「バルトリハリ(インドのサンスクリット叙情詩人)」『日本大百科全書(ニッポニカ)』。https://kotobank.jp/word/バルトリハリ(インドのサンスクリット叙情詩人)。コトバンクより2023年5月17日閲覧。 
  • 前田専學 2018年7月20日「バルトリハリ(古代インドの文法学者、哲学者)」『日本大百科全書(ニッポニカ)』。https://kotobank.jp/word/バルトリハリ(古代インドの文法学者、哲学者)。コトバンクより2023年5月17日閲覧。 
  • 『バルトリハリ』 - コトバンク



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